沖縄本島北部の名護ビーチの海の前にあったゲストハウス&カフェ「ビーチバムパラダイス」のブログ。
スタッフとお客さんたちが一緒になって綴る、アホらしくもハッピーな日々の記録です。
お店はなくなってしまったけど、管理人の個人的雑記でも綴ってみようかななんて思ったリ思わなかったり。。。
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このところちょっとネタが低調気味かなあと思っていた探偵ナイトスクープだが、今日の(沖縄ではひと月ほど遅れて放送されている)最後の依頼と、そのあまりにも鮮烈な顛末に衝撃を受けたので、忘れないうちに書き留めておくことにした。
その五十男の苦悩は、あまりに小児的すぎて、会場の失笑を誘うものだった。
男は十数年連れ添った少し年上の妻のことを今でもとてもすきで、付き合い始めた頃と変ることなく大切に思っていた。
ある晩、男の夢の中に見知らぬ若い女が現れた。 歳は二十才で、短く切った黒髪とパッチリとした瞳が印象的な女は、砂浜にたたずんでいた。 男ははじめて出会ったその女に惹かれ、傍へいこうと歩み寄る。 ところがあと少しというところまで近づくと、さっと身をひるがえして離れていってしまう。また追いかけようとして手を伸ばすが、そのぎりぎりのところで彼女はまた歩きだし、どうしても追いつくことができない。 そうして目が覚めると、となりには五十を過ぎ、白髪も増えた妻がすやすやと寝息をたてているのだった。
その寝顔をみながら、なぜか抑えようのない罪悪感に苛まれた。 男は夢のなかの女性に恋をしてしまったのだ。
別の夜、また彼女の夢をみた。 どこかのプールだった。 すらっとした体に競泳用の水着をつけた彼女の黒髪が濡れて光っていた。 追いかけると彼女は飛び込み、綺麗なフォームのクロールで泳いでいった。 ものすごく速かった。 追いつくことができない。
目が覚めると、やはりとなりで妻が眠っている。 この夢の出来事を妻に話そうと思うのだが、どうしてもそれができない。 男の苦悩は、本物の恋煩いとして、本物の不義の恋へのうしろめたさとして、彼を追い詰めていったのである。
またしても彼女の夢をみる。 バレーボールのコート。 相手チームに彼女はいる。 アタッカーの彼女は容赦ないスパイクを男に向かって打ち込んでくる。その美しい顔にみとれていると、猛烈な勢いでとんできたボールが顔面をおもいっきり強打する。
目が覚めると、いつものように妻が眠っている。 妻への罪悪感と、夢の中の女への憧憬は日をおう毎に加速を続け、ひとりで抱えつづけることは絶え難い苦痛を伴った。
そしてある日、男は決心した。 妻に夢のなかの美少女のこと、自分がその娘に恋い焦がれていることを、告白した。
妻はひどく動揺した。 男のことを深く愛していたし、夫も自分を決して裏切らないと信じていたから。
そして男の夢の中だけに現れるその実在しない女に激しく嫉妬した。 なぜならたとえ男のすべてを手にしたとしても、かれの夢の国土は自分にとって絶対不可侵な領土であり、そこで語られる物語に自らの意志で参加する事もできなければ意向を反映させる事も永遠に不可能だからだ。
実在する恋敵のように、出かけていって文句をいうことも、話をつけることも、ぶん殴る事もできない。 そしてなによりも妻を失望させたのは、それが愛する夫の真の願望に他ならないからである。
妻は許すことができなかった。 男にはなす術がなかった。 ただ一枚の絵を差し出すほかは。
そこにはひとりの少女の顔が描かれていた。 つかもうとするほどに手の間をすり抜けていく夢の記憶だけをたよりに、男が描いたものだった。
夫が想いをよせたという美しい黒髪の少女は、澱みのないまっすぐな瞳で妻をみつめていた。
その瞬間、妻の眼から一筋の涙が溢れ出た。 そこにいる少女は、不可侵の世界の閉ざされた過去に暮らす、紛れもない自分だった。 颯爽とクロールで泳ぎ、エースアタッカーとして活躍していた、あの日の自分に相違なかった。
妻は男を抱きしめた。 これは私なのよと囁いた。 男はまだ合点がいかないようだったが、妻は得心していた。 気持ちは動揺から抱擁へとなだらかに凪いでいった。
しばらく前に男はある失くしものをした。 それは黒髪を肩より上に切りそろえた、二十才のころの妻が写っている一枚の写真だった。 彼はそれをずっと大切にしていたが、いつの日からかどこをどう探しても見つからなくなってしまっていた。
妻はあの絵をみてすぐに、それがあの写真の中の自分であると悟った。 そして、夫は失くした写真を夢の中で探しつづけていたのだろうと考えることにした。 あるいは探していたのは写真のなかに封じ込められた二度と返ることのない若き日の残像を象徴する想念のほうだったかもしれないが、それはそれでも構わなかった。
男はまだそう納得していないようだし、心理学の先生や精神科医なら、もっと違った見立てをするかもしれないが、妻はそれで幸福だった。 (おわり)
少々興に入って、ドラマ仕立てに書いてしまったが、大筋では実話である。 「五十過ぎの夫婦がええ歳こいてなにをおセンチゆうとるねん」といってしまえば、それまでの話である。
でも僕は、この奥さんが絵をみて泣き出した途端、電気が走ったようにサブイボたった。そして不覚にも目頭が熱くなった。 事実は小説より寄なりというけれど、これは事実だからというよリ、五十過ぎの夫婦のこんな純愛ばなしがキモいとか感じるどころか、むしろ強力に引き込まれた自分自身に驚愕したのでした。 まったく探偵ナイトスクープは恐るべき番組である。
その五十男の苦悩は、あまりに小児的すぎて、会場の失笑を誘うものだった。
男は十数年連れ添った少し年上の妻のことを今でもとてもすきで、付き合い始めた頃と変ることなく大切に思っていた。
ある晩、男の夢の中に見知らぬ若い女が現れた。 歳は二十才で、短く切った黒髪とパッチリとした瞳が印象的な女は、砂浜にたたずんでいた。 男ははじめて出会ったその女に惹かれ、傍へいこうと歩み寄る。 ところがあと少しというところまで近づくと、さっと身をひるがえして離れていってしまう。また追いかけようとして手を伸ばすが、そのぎりぎりのところで彼女はまた歩きだし、どうしても追いつくことができない。 そうして目が覚めると、となりには五十を過ぎ、白髪も増えた妻がすやすやと寝息をたてているのだった。
その寝顔をみながら、なぜか抑えようのない罪悪感に苛まれた。 男は夢のなかの女性に恋をしてしまったのだ。
別の夜、また彼女の夢をみた。 どこかのプールだった。 すらっとした体に競泳用の水着をつけた彼女の黒髪が濡れて光っていた。 追いかけると彼女は飛び込み、綺麗なフォームのクロールで泳いでいった。 ものすごく速かった。 追いつくことができない。
目が覚めると、やはりとなりで妻が眠っている。 この夢の出来事を妻に話そうと思うのだが、どうしてもそれができない。 男の苦悩は、本物の恋煩いとして、本物の不義の恋へのうしろめたさとして、彼を追い詰めていったのである。
またしても彼女の夢をみる。 バレーボールのコート。 相手チームに彼女はいる。 アタッカーの彼女は容赦ないスパイクを男に向かって打ち込んでくる。その美しい顔にみとれていると、猛烈な勢いでとんできたボールが顔面をおもいっきり強打する。
目が覚めると、いつものように妻が眠っている。 妻への罪悪感と、夢の中の女への憧憬は日をおう毎に加速を続け、ひとりで抱えつづけることは絶え難い苦痛を伴った。
そしてある日、男は決心した。 妻に夢のなかの美少女のこと、自分がその娘に恋い焦がれていることを、告白した。
妻はひどく動揺した。 男のことを深く愛していたし、夫も自分を決して裏切らないと信じていたから。
そして男の夢の中だけに現れるその実在しない女に激しく嫉妬した。 なぜならたとえ男のすべてを手にしたとしても、かれの夢の国土は自分にとって絶対不可侵な領土であり、そこで語られる物語に自らの意志で参加する事もできなければ意向を反映させる事も永遠に不可能だからだ。
実在する恋敵のように、出かけていって文句をいうことも、話をつけることも、ぶん殴る事もできない。 そしてなによりも妻を失望させたのは、それが愛する夫の真の願望に他ならないからである。
妻は許すことができなかった。 男にはなす術がなかった。 ただ一枚の絵を差し出すほかは。
そこにはひとりの少女の顔が描かれていた。 つかもうとするほどに手の間をすり抜けていく夢の記憶だけをたよりに、男が描いたものだった。
夫が想いをよせたという美しい黒髪の少女は、澱みのないまっすぐな瞳で妻をみつめていた。
その瞬間、妻の眼から一筋の涙が溢れ出た。 そこにいる少女は、不可侵の世界の閉ざされた過去に暮らす、紛れもない自分だった。 颯爽とクロールで泳ぎ、エースアタッカーとして活躍していた、あの日の自分に相違なかった。
妻は男を抱きしめた。 これは私なのよと囁いた。 男はまだ合点がいかないようだったが、妻は得心していた。 気持ちは動揺から抱擁へとなだらかに凪いでいった。
しばらく前に男はある失くしものをした。 それは黒髪を肩より上に切りそろえた、二十才のころの妻が写っている一枚の写真だった。 彼はそれをずっと大切にしていたが、いつの日からかどこをどう探しても見つからなくなってしまっていた。
妻はあの絵をみてすぐに、それがあの写真の中の自分であると悟った。 そして、夫は失くした写真を夢の中で探しつづけていたのだろうと考えることにした。 あるいは探していたのは写真のなかに封じ込められた二度と返ることのない若き日の残像を象徴する想念のほうだったかもしれないが、それはそれでも構わなかった。
男はまだそう納得していないようだし、心理学の先生や精神科医なら、もっと違った見立てをするかもしれないが、妻はそれで幸福だった。 (おわり)
少々興に入って、ドラマ仕立てに書いてしまったが、大筋では実話である。 「五十過ぎの夫婦がええ歳こいてなにをおセンチゆうとるねん」といってしまえば、それまでの話である。
でも僕は、この奥さんが絵をみて泣き出した途端、電気が走ったようにサブイボたった。そして不覚にも目頭が熱くなった。 事実は小説より寄なりというけれど、これは事実だからというよリ、五十過ぎの夫婦のこんな純愛ばなしがキモいとか感じるどころか、むしろ強力に引き込まれた自分自身に驚愕したのでした。 まったく探偵ナイトスクープは恐るべき番組である。
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